東京芸術劇場コンサートホール(以下芸劇)の色々な座席(1~3階の各センターブロック・バルコニー席ともに実際に経験あります)を試した経験をもとに、各ブロックの見え方・音の聴こえ方の特徴について書いていきます。芸劇の公式サイトには座席の見え方や聴こえ方の情報が少なくてどの席が良いか迷ってしまう……という方の参考になれば幸いです!
おすすめの席はどこなのかそれだけ知りたいのよ、早くしてちょうだい、という方は「9.総括」に飛んでくださいね。
なお、注意点(?)ですが、見え方の記述について、私の視力は矯正で両目1.5程度です。本当は写真を載せられるとイメージしやすいのですが、写真撮影禁止の公演が多いのでなかなか写真を入手できないのですよね。
また、聴こえ方については、あくまでも自分の印象ですので、悪しからず……(一応、SNS等でも同様のご意見を見かけるので、それほど的外れなことを言っているとは思いませんが……)。
東京芸術劇場 コンサートホールについて
東京芸術劇場は池袋駅西口にある芸術文化施設。地下通路を通れば雨の日も濡れずに行くことができ、アクセスのよい便利な施設です。徒歩数分の距離にセブンイレブン・ファミリーマートがあるので、発券を失念していても安心です。
クラシック専用の大ホールであるコンサートホールは、1~3階席まで約2,000席。それぞれにセンターブロックとは別にサイドバルコニー席があります。
以下、1階から順にブロックごとに座席の特徴を書いていきます。参考に都内プロオーケストラの座席表リンクを貼っておきますので、ご参照ください。一番座席割りが細かいのは東京都交響楽団。逆に読売日本交響楽団はかなり大胆です。
読売日本交響楽団 土曜マチネーシリーズ / 日曜マチネーシリーズ座席表
東京佼成ウインドオーケストラ | 東京芸術劇場コンサートホール座席表
1階 センターブロック
1階のいわゆる平土間は、A列~E列までがフラットで、F列から段差があります。が、段差はかなりなだらか。私はM列のセンター付近に座ったことがありますが、ひな壇より上の管楽器部隊はほとんど見えませんでした。ただ、弦楽器のトップ陣は細かい表情までよく見える(オペラグラスは不要なほど)ので、管楽器部隊にすきな楽団員さんがいる方以外はそれほど気にならないのかもしれません。
そして、肝心の音はどうかと言うと、残念ながらいまいちなのでした。近いので迫力のある音を期待していたのですが、頭の上を音がすり抜けていくような薄い音。2階席で聴くような綺麗な残響音もほとんど感じられません。しかも近いがゆえに、楽器ごとに音がかなり分離していて、正直あまり良い音とは言えません。どこのオーケストラもこの1階センター付近はS席となっていますが、正直個人的にはS席???という印象。特段の事情がない限り、今後取ることは無いですね……。
指揮者やソリスト、弦楽器トップ陣が目当てであれば、最前列のセンター付近はアリ。音の分離は免れませんが、目の前なので迫力のある音や細かい表情、動きを楽しめます。ミューザやサントリーホール等と比べてしまうとステージがやや高いですが、上記のような目的であれば十分楽しめると思います。
1階 バルコニー席
このブロックは座席数が29席ずつしかないので、比較的人口密度が低め。平土間などで人に囲まれて聴くのが苦手な人にはおすすめです。特にセンター寄りの端は、目の前が柵になっているため視界も良好。1階センターブロックよりも高さがあるので、オーケストラ全体を見ることができます。死角なし(重要!)で、一番近くでみられるのはこのブロックですね。
聴こえ方としては、距離が近い割には迫力がないようにも感じましたが、クリアな解像度の高い音、という印象。
比較的バランスの取れた座席なので、後述する2階センターブロックより近くで全体を見たい、ということであれば、それなりにおすすめできるブロックです。
2階 センターブロック
バランスの良さNo.1。特にこだわりは無いけど、良い席を紹介してほしい、と言われたらこのブロックの前方をおすすめしますね。当然、死角はなく見やすい。段差も(1階席よりは)しっかりついているので、手前の人が相当大きな人でない限り気になることはないと思います。ややステージから距離があるので、オペラグラスがあると安心かもしれません。
音も1階席より格段に良いです。濃い直接音と、芸劇ならではの解像度の高い豊かな残響音とを両方とも楽しめる、バランスの良い席だと思います。S席の中で選ぶなら、絶対にこの2階センターブロック前方ですね。
2階センターブロックの後方(J列以降・だいたいA席設定)は、やや響きすぎの印象もありますが、音は濃いと思いました。すこしステージから遠いのは否めませんが、楽団員さんの表情は十分見えますし、全体を見渡せるのもよいです。細かいところは見えなくても良い(or オペラグラスで見えればOK)けれど、全体を見たいという方にはなかなか良いのではないでしょうか。
2階 バルコニー席
現地でオーケストラを聴く醍醐味・臨場感と迫力のある直接音を浴びたいのなら、間違いなくこのブロック。サイドなので、音のバランスが悪そうに見えますが、B列以降であれば、実際にはそれほど気になることはないです。手前の音も、逆サイドの音も明快によく聞こえてきます。ステージサイドのA列はさすがに近くの楽器(特にベルがうしろを向いているホルンや打楽器)が大きく聞こえますが……。迫力のある音を重視するのであれば、このブロックがおすすめ。
見え方は、当然近いのでオペラグラスは不要。A列~D列ぐらいであれば、指揮者の表情も良く見えます。ただし、手前側の楽団員(R側ならヴィオラor第2ヴァイオリン、L側なら第1ヴァイオリン)は背中しか見えません……。
なお、ステージサイドのA列は手前側がやや見切れます。R側のA列に座ったことがありますが、コントラバスはほとんど見えませんでした(通常配置)。
もうひとつ、このブロック、特にステージ寄りの席(A列~D列ぐらいまで)で面白いのは、舞台袖が見えること。開演前に舞台袖で音出しをする楽団員さんや、終演後に笑顔で楽団員を迎える指揮者さんを垣間見るのはなかなか楽しいです。
ほとんどのオーケストラで、このブロックはA席(ステージサイドはB席)に設定されているのも嬉しいポイント。S席はやっぱり高い(たまになら良いですが、自分は年間150回以上演奏会に行くので……)ので、A席で満足のいく音で聴けるのはありがたいです。
3階 センターブロック前方(A列~G列)
3階センターブロックは広いので、前方と後方に分けてお話しします。まず前方(A列~G列)。
いやあ本当に申し訳ないのですが、このブロックの良いところが正直思いつきません……。観るという点からは遠すぎる(オペラグラス必須)し、聴くにも音が遠い。直接音はほとんどなく、ホールに響いた間接音を聴くしかないのですが、なんだかぼやけた音なんですよね……。ここが芸劇の不思議なところで、後述する3階後方席の方がはっきりした濃い音を聴くことができます。
ということで、ここも自分は特段の事情がない限り、自らすすんで取ることはないですね……。
ただし、下記に色塗りをした壁際のエリアだけは別です。このエリアは3階バルコニー席には音の迫力では負けますが、3階後方エリアと同じくらい良い音で聴くことができます。解像度の高い、心地良い響きです。人口密度も低めで快適。3階後方と同じ最安料金の場合は、このエリアを取ることがほとんどです。
3階 センターブロック後方(H列~K列)
コスパの良さNo.1は間違いなくこのブロック。かなり自信をもっておすすめできます。どこのオーケストラでも最安席なのですが、侮ること勿れ、『聴く』という点においては超!優良席なのですよね。
見た目は想像どおりの遠さ。ただ、その見た目から音を想像していると、脳が混乱するぐらいクリアで思いのほか迫力のある良い音を体感出来ます。残響音も非常に解像度が高く、心地よく聞こえます。 これはなんなのだろう、と考えてふと気が付いたのですが、このあたりの席はちょうど反響板の屋根と高さが同じぐらいなのですよね。ステージから上にあがった音が反響板づたいにダイレクトに聞こえてくるような印象。物理をきちんと学んでいないので、本当に音がそんな伝わり方をするのかは分かりませんが……。
【参考】
↓ PDF3ページ目の『コンサートホール断面図』 オーケストラの公演で多い反響板のパターンはパターン3とのこと(芸劇ツアー参加時の情報)。
ということで、ひとまず聴いておきたいけどなるべく費用は抑えたい、というコスパ重視派にはこの3階後方ブロックがおすすめ。都響の定期なんて(公演にもよりますが)2,000円ですよ!ユースでもないのにこの値段で良い生音を摂取できるのはありがたいですね。
3階 バルコニー席
見え方としては、2階センターブロックと同じくらいの距離(高さはありますが)なので、とても見やすいです。2階バルコニー席前方とは違い、奏者さんの背中しか見えない、ということもないので、見やすさの面でも優秀です。
聴こえ方としては、意外と迫力がある直接音と、解像度の高い残響音とを両方楽しめます。2階バルコニー席よりは直接音の割合が減りますが、思いのほか迫力はあります。このあたりの席でも、足の裏から音の振動が伝わってくるほど。
このブロックはほとんどのオーケストラでB席設定です。音も見え方も妥協したくないけれど、費用はなるべく抑えたい、と言う方にはこのブロックがおすすめ。
総括
色々と書いてきましたが、どの席が良いか、というのは最終的には好み、何を重視するのか、ということになるのだと思います。ということで、総括として『ここを重視するならこのブロック』というのを書いて終わります。
ちなみに、わたしは直接音の迫力を味わいたい派なので、もっぱら2・3階のバルコニー席が多いです。2日目公演をお代わりするときはお財布を労わって、だいたい3階席後方。
また、好みの見え方を探すには、開演前や休憩時間にホール内を歩いてみるのも良いと思います。聞こえ方についても、開演前に舞台上で音出しされている音を聴いてイメージしてみることができますね。自分も何度か3階後方から下まで降りていったことがあります。お客さんが多いとやりにくいですが、開場直後の人が少ない時間にやってみたりしていました。
みなさまもお気に入りの席がみつかりますように。
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