しっかりした、煌びやかな残響音が特徴のサントリーホール。意外と大きくないホールなので、どの座席に座っても、それなりの音を楽しめますし、視界もそれほど悪くない、座席による当たり外れが比較的少ないのがこのホールのよいところ。が、ブロックごとにかなり特徴の違いがあるので、好みの座席を見付けるのに時間がかかりました……。その過程で、結局すべてのブロックに座ってみることになったオタク。見え方については公式サイトに詳しいのでそちらにお任せして、今回は聞こえ方を中心に書いていきます。
いちばん良いのは、いろいろな座席を試してみることですが、そう何回も足を運べる訳ではない方が多いと思いますので、座席選びの参考になれば幸いです。ちなみに細かくブロックごとに書いていったらとても長くなってしまったので、気になるブロックがある方は直接もくじから飛んでくださいね・・・。
サントリーホール 大ホールについて
「世界一美しい響き」を基本コンセプトに掲げて設計された、ヴィンヤード形式のコンサートホール。
東京メトロ南北線の六本木一丁目駅がいちばん近い駅で急げば3分ぐらい。東京メトロ銀座線・南北線の溜池山王駅からも徒歩圏内です。六本木一丁目側は、サントリーホールに直結しているアーク森ビルに飲食店は入っていますが、相場が高いのと、あまりさくっとご飯を食べるのに適していないので、ごはんを食べるときは溜池山王から行くことが多いです。溜池山王側には、ラーメン屋やなか卯などがあり、時間がないときの食事に便利です。
サントリーホールの大ホールは、1階と2階あわせて約2,000席。ステージの後方やサイドにも座席があるのが特徴のホールです。見え方は下記の公式サイトをご参照ください。
参考として、サントリーホールで定期演奏会を行っているプロオーケストラの座席表をいくつか貼っておきます。
いちばん細やかなのは東京都交響楽団。逆に大胆なのはNHK交響楽団と読売日本交響楽団でしょうか。
東京フィルハーモニー交響楽団 サントリー定期シリーズ 座席表
1階 前方4列目あたりまで
まずは1階席最前列。言うまでもなく、迫力のある直接音を存分に楽しめます。サントリーホールはステージの高さが低めなので、最前列でも首が痛くなりにくいのが良いです(東京文化会館なんかはかなり高いので、最前列は首がやや痛くなります)。
当然のことながら、目の前の弦楽器の音が多めに聞こえるため、音のバランスについては期待できません。しかしながら、指揮者や奏者の細かな表情や息遣いを間近で感じることができるため、ある意味では生演奏を聴く醍醐味を味わえる席です。管楽器奏者はほとんどと言って良いほど見えませんが、距離は近いため、音は意外とよく聞こえます。
指揮者目当てなら、後述するP席とよく言われますが、個人的には指揮者をよく見るのであれば、この最前列の通路脇の席あたりが好みです。P席はたしかに指揮者の表情をよく見ることができますが、あの息遣いや迫力、コンマスへの鋭い(人によってはとっても優しい)視線などを間近で感じられるのは最前列ならではだと思います。
N響は強気のS席ですが、ほとんどのオーケストラでA~B席設定なので、お財布にも優しい。
ただし、両サイド壁寄りの座席(1列5~12、31~38あたり)は視界がほとんど目の前の奏者さん(というよりもひな壇)メインになってしまうので、なかなか厳しいものがあります。どう考えてもS席ではないと思うのですが、N響はそれでも完売しますからね……。これからもこの設定が変わることはないのでしょう……。
それと、ピアノ協奏曲のときは、中央寄りの座席(1列16~27)はかなり耳が痛くなりますので覚悟が必要です……。他の方の感想を見るに、とても良い演奏だったのだと思われますが、わたしはかなり中央寄りの席に座っていたため、とにかく耳が痛くて辛かったので、そのつもりで臨むことをおすすめします。
1階席(最前方以外)
最前列から離れると、音のバランスは良くなります。サントリーホールならではの煌びやかな残響音も楽しめる座席。ほとんどのオーケストラでS席設定です。
最前方席よりは若干マシですが、傾斜はそれほどしっかりついていないため、ステージ後方の管楽器や打楽器などは見づらいです。また、センターブロックは座席が千鳥状になっていないので、前の席に大きな方が座られるとちょっと辛いかもしれません(小柄な方は特に)。
とはいえ、サントリーホールらしい豊かな響きを味わえますし、座席数もいちばん多いブロックなので、それほど強いこだわりがない方であれば十分満足できるのではないかと思います。
なお、後方の2階席が被るエリアはあまり音がよくない(音が届きにくい)とされてるのでご注意を。実際に、ほとんどのオーケストラにおいて、A席以下の設定となっています。
2階 RA・LAブロック
このブロックは、3つに分けて解説します。オーケストラの座席割も、この3つに価格設定が分かれていることが多いです。
いちばん手前(客席寄り)側
RA・LAブロックのなかでは、いちばん視界・音ともに良いエリアです。
ステージに近いので、当然、直接音が多めとなります。若干、自分に近い側の楽器の音が大きく聞こえますが、音のバランスが気になりにくいギリギリのラインだと思います(後述する真ん中以降のブロックとの比較で)。
やや手前の見切れが多くなりますが、後方の座席の方がバランスが良い音で聴くことができます。
このあたりは、S席よりも低いA席やB席設定であることが多いため、予算との兼ね合いでこのエリアの後方席を取ることが多いです。
真ん中のエリア
手前側は見切れますが、想像よりも音のバランスは悪くありません。当然ですが、ステージ手前側(客席側)の方が音のバランスは良いです。こちらも後方の座席の方が各楽器の音が混ざり合うので聞きやすくなります。
迫力のある音、演奏者や指揮者の様子を間近で見たい方にはおすすめ。このあたりはだいたいB~C席設定でお財布にやさしいのも嬉しいポイント。L側は、指揮者が真下を通って行くので、演奏直後の指揮者の表情を間近で見られるのもなかなか楽しいです。ただ、ソロカーテンコール(いわゆる一般参賀)で扉の近くまでしか出てきてくれない場合はほとんど見えず、すこし残念な気持ちになります……。
このエリアの真ん中〜奥側は管楽器奏者が近いので、管楽器奏者さん目当てならここもオススメできます。息遣いや細かい動きが見えますし、音がよく聞こえるのでとても勉強になります。
ただ、L側のステージ奥側のエリアは、ホルンと打楽器が近く、曲やオケによってはこれらの音で他の楽器の音がかき消されることもあるので、いくら迫力のある音がお好きな方といえども慎重に選んでください。
また、ピアノ以外の協奏曲ではソリストの背中しか見えないので、その覚悟で。距離は近いので、音としてはそれほど物足りなさは感じませんが……。
いちばん奥側
隣のエリアとほぼ同じですが、すこしステージの見切れが多くなります。その分なのか、だいたいP席と同じく最安席の設定となっていますが、音の感覚としては隣のエリアとあまり変わりません。価格差を感じるほどの違いではないと個人的には思います。人口密度も低いので、このブロックを取ることもあります(席数が少ないのでなかなか取れませんが……)。
Pブロック
ステージ後方の座席。ピアノリサイタルでもない限り、大体最安料金です。
サントリーホールはP席も音響が良いと言われていますが、個人的にはかなり疑問。たしかに音の質自体はそれほど悪くないですが、左右は反転していますし、普段後ろから聞こえてくる金管楽器や打楽器の音が手前で聞こえる違和感がどうしても拭えません。
ステージの見切れは多くなりますが、後列の方が比較的マシ(上記違和感が薄まる)ではあります。指揮者の表情や奏者とのやり取りはとてもよく見えるので、そういう目的であれば安いですし良いと思います。あとは打楽器奏者さんを間近でみたいとか。
小編成の室内楽やソロリサイタルであれば、この違和感がそれほど気にならないので、個人的にはかなり選択肢として有力です。特に小編成の室内楽であれば、奏者さん達のやり取りや息遣いがよく見えて面白いです。
RB・LBブロック
ステージ側の横を向いているエリア
ステージに近いため、直接音多めの迫力のある音を楽しめます。ぎりぎりステージを前から見ることになるので、音のバランスは悪くありません。手前側の音が聞こえすぎる、ということもないと思います。
特にL側は、ソリストの音を近くで聞きたいが、オケ全体の様子もしっかり見たいという方におすすめ
です(ピアノの場合はお顔を見たいならR側通路寄り)。
どこのオーケストラでもS席のエリア
見やすさ、音のバランスのよさで言ったらやはりここ。十分な直接音と、サントリーホールならではの豊かな残響音の両方を楽しめるエリアです。金額は置いておいて、おススメの座席を聞かれたら、確実にこのブロックの真ん中あたりをつよく推奨します。
このエリアはどのオーケストラでもS席設定。チケットの値段と興味関心度合いにもよりますが、この辺りが7000円代で取れれば絶対にここを取ります。
ただ、手前側の奏者(R側なら第一ヴァイオリン、L側ならヴィオラか第二ヴァイオリン)はほとんど背中を見ることになるので、推し楽団員さんがいる場合はLRどちらに座るか注意です。また、最前列はかなりステージが近く、意外と見切れが多いので、ある程度後ろの座席の方が見やすさはUPします。
RC・LCブロック
こちらもだいたいS席のエリア。
Bブロックに比べてややステージから遠いですが、サントリーホールのきらびやかな残響音を楽しめる席だと思います。直接音よりも、豊かな残響音を楽しみたい方にはお勧めできます。
RB・LBブロックよりも死角が少ないので、全体を見たい、ということであればこちらの方が良いかも。音のバランスも文句なしに良いです。
2階センターブロック
こちらのエリアはステージからやや遠くなるので、B・Cブロックよりもさらに残響音寄りの響きとなります。遠いとは言っても、肉眼で十分奏者さんの表情は見える程度です。このあたりからオペラグラスがあると安心かもしれません。
ただし、このブロックの後方はやや音が薄くなる印象なので、どちらかというと後述するDブロックの方がおすすめです。
RD・LDブロック
ここは本当に……難しいエリアですよ……。個人的にはサントリーホールでいちばん難しいエリア。
各オケの座席表を見ても、それぞれまったく異なる席割りになっています。センター側・壁側両方に座ってみましたが、個人的には壁側の方が音が濃い印象です。センター側は音が薄くてぼんやりしているうえに、(当たり前ですが)ステージから遠い。
壁寄りの方が若干ステージに近いですし、意外と迫力のある音を楽しめると思います。たまに壁に反響する音が変な感じ(いわゆるお風呂場みたいな響き方)がするけれど、自分はそれほど気になりません。
また、前方と後方ではあまり音に差はないと思います。前の方が多少見やすい、ということはあるけれど、それで数千円の価値があるほどの違いではないと思います。
前方と後方が同じ値段であれば前方を取りますが、価格差があるのであれば後方を取ることがほとんどです。
おすすめ座席はここだ!
いろいろと書いてきましたが、それぞれの座席に良いところと悪いところがあるので、最終的にはどの席が良いかは好みです。とはいえ、まずはなにか指針があった方が良いと思うので、個人的に目的別のおすすめ座席を書いて終わります。
東京芸術劇場の記事でも同じことを書いていますが、好みの座席を見つけるためには、やっぱりいろいろと試してみるのが一番です。そのヒントとなるのが、開演前に団員さんが音出しをしている時間。ぜひ早めに入場して、ホール内を歩いてみながら、音の聞こえ方の違いを体感してみましょう。
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